イスラム学者の中田氏の本。
編集者が考えた質問に、イスラム教徒でありイスラムの法を研究してきた著者が答えていくという形式。
世の中の少年少女が抱きそうな質問(学校について、大人について、恋愛について等)を取り上げている。
著者が目指す、世界征服とは
世界征服は、著者が将来の目標として設定しているものである。
世界征服がなぜいけないと言われるのか。それは国家を侵害するからです。しかし、中田先生はその国家こそが、現代の私たちの中にもっとも深く入り込んでいる無意識の枷だと言います。
まえがき
中田氏自信は、カリフ制再興を目指している。
カリフとは、イスラム世界のリーダーであり、カリフ制再興の暁には国境をなくして自由に移動ができるようにするらしい。
ただ、著者はこの夢が本当に実現するとは思っていない。
将来の不安を解消するのに一番いいのは、「絶対に実現しない夢」を持つことです。不安なのは、夢や希望が実現するかどうかわからないからです。実現しないとわかっていれば、不安の持ちようがありません。
生きていく上で一番大切なもの
生きていく上で一番大切なものは何でしょう?という質問に対して、可愛さが大切である。と説く。
生きていくためには、「高い能力を身につけることが大切だ」と思う人も多いと思うが、
それに対し著者は次のように言う。
能力はかえって邪魔になる場合が多いです。・・・小さくて、もふもふしていて、弱そうに見えるのが大切です。人間的成熟の理想は、年を取って可愛くなることなんです。可愛い老人こそが、成熟した人間の理想形です。・・・
運動に関する考え方
運動が得意ではありません。
に対しての答えが
歩けりゃいいんです。普通に歩けりゃ十分。・・・運動ができるようになりたいのなら止めはしませんが、「できないけどやりたい」ってのはバカです。
実際、生きていく上で確かに「歩ければ十分だ」と言える。
この回答にはうなずかされた。
このように弱者に優しい意見を述べてくれる。
社会のルールに対抗
いっぽうで、反社会的と思われそうな内容もある。
自分の家が貧乏だと感じることが多いです
という質問に対して
・・・それでも苦しいと思うのなら、交番に行って「ここに住まわせてください」とお願いしてみてはどうでしょう。聞いてもらえなければ、半グレ集団に入って刑事事件を起こして逮捕してもらう。うまくいけば刑務所に送ってもらえます。本当に苦しければ、そういう生き方だってアリです。
と書いていたりする。
他にも、いざとなれば刑務所に行くという方法がある ということを数箇所で書いており、
著者が数多くの人から危険人物とみなされる理由がわかる。
善悪について、著者はイスラム教徒であるという観点から次のように考えている。
人間が「これはやってはいけない」と言っていることにはすべて何の根拠もありません。この世の善悪は人間には決められません。もちろん法律には善悪の根拠などありません。法律における合法と不法ということと、宗教や道徳における善悪とは別の問題です。
感想
本書全体にわたり「太古の原始時代に戻って現代の価値観を見直す」ような雰囲気を感じた。
世の中の価値観や細かい規律の数々にとらわれて、生きることが苦しくなっている現代人に新たな視点を与えてくれる一冊と思う。
いっぽう、反社会的とされる行動に対しても否定してないというか、自分がやりたいと思うなら法律で禁止されていてもやればいい。という感じのスタンスである。
なので、自分としては、隣人や親しい友人がこの本を愛読していると言ったら(非常識行動を始めるのではないか?)という感じで、警戒すると思う。そんな感想を持った。
まとめ
世間で言われている考え方に挑戦するような考え方を提示。
本書の中では世間の常識と離れていて、よく理解できない印象があることも多い。
しかし、「このような考え方もできるのか。」と思うことで読者の視野や考え方の幅が広がる気がする。
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