本書は、2007年に発行された本で、新宗教(新興宗教)のうち有力なものを10個取り上げて解説をしたもの。
著者の島田裕巳氏は、一般向けの書籍を多数著している宗教学者。
どのような新宗教を選んだか。
新宗教のなかでも、反社会的な教義をもつものはとりあげていないという。
本書では、社会的な影響力などを考慮して、十の教団が選んである。
十教団を選んだからといって、評価を意図してはいないという点である。
そして、「カルト」として扱われることが多い宗教は扱われていない。
本書で取り上げられている新宗教。
天理教、大本、生長の家、天照皇大神宮教、立正佼成会、創価学会、世界救世教、PL教団、真如苑、GLA
これらの諸宗教の成立と、経過が書いてある。
大本教への高評価。
著者は「各新宗教に対する評価を意図してはいない」と断っているものの、本書の中での大本教や立正佼成会への記述は好意的であると思った。
著者は、大本教は研究しないと思ったという。その理由が印象的だった。
出口和明著「大地の母」という本があるが、著者はこれを読んで次のように思ったという。
「大地の母」を読んで、私の大本に対する印象は一変した。そして、大本のことだけは研究すまいとも思った。それは、とても研究者があつかえるような世界ではなかったからである。大本に起こったことを合理的に解釈することなどできない。しかも、著者は、膨大なファクト(事実)にもとづいて物語を書いている。・・・大本にかんしての研究は不可能だという気持ちは、今も変わらない。
数多くの宗教に通じている著者が「研究は不可能だ」と思ったほどの小説「大地の母」とはどのようなものなのか。興味が湧いた。
現代の新宗教
現代日本は、新宗教が広がる状況にあるのか。
新宗教がその勢力を拡大するのは、社会が混乱した状況や過渡期にあるときで、とくに経済発展が著しいときに伸びていく。
本書が執筆された2007年時点では、現在の日本では新宗教に集団的なエネルギーの爆発のようなものは見られないとして、
現代は必ずしも新宗教の時代とは言えないのかもしれない。
と述べる。しかし、
時代状況が変化すれば、宗教はたちまちその力を取り戻し、蘇っていく。・・・新宗教に集まってくるのは、その時代の大きな流れについていくことができなかったり、社会のあり方に不満をもっている人々である。・・・新宗教は時代を映す鏡としての性格をもっている。
2021年時点で、本書出版から15年が経った。
本書に取り上げられておらず、この間に影響力を伸ばした教団もあることだろう。著者の最近の見解も確認をしてみたい。と思った。
感想
芸術や科学技術、スポーツを肯定する新宗教が多いことがわかった。たとえば、天理教、MOAやPLなど、甲子園でも活躍する新宗教が多い。
自分のイメージでは、宗教というと、細かい規則・理不尽な慣習があると思っていたが、本書に描かれる宗教はそうでもないことがわかった。
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