本書は、「教祖として成功するための方法を解説するマニュアル」という体裁で宗教のビジネス的側面を解説している。
全体的に、パロディの色彩が強い本。
著者は、ほかにも「よいこの君主論 」などを出している作家である。
教祖としての行動は完全でなくてもよい。
常識で考えると、宗教の教祖となるような人物であれば、言動と行動につねに整合性を持って、尊敬されるような生活をしなければならないような気がする。

しかし、本書では教祖とはそのように難しいものではないということを説明している。
教祖がどのように教えを作っていくかが具体的に書かれている。これを読むと、簡単に宗教が作れそうな気がしてくる。
本書では教祖としてどう行動すればよいか、多くのキャッチフレーズを使っている。
例
・神を生み出そう
・(神が自分でできない場合には)既存の宗教を焼き直そう
あなたの具体的行動指針を示すと次のようになります。すなわち、あなたはまず仏教、キリスト教などの伝統宗教、もしくはそれなりに歴史のある新興宗教へと入信します。しばらくはそこで真面目に信者生活をして下さい。すると、どうしてもそこの教えに対し、「これは現代的感覚に合ってないな」と思うところが出てくるはずです。そうなればチャンスです。その「合ってないな」と思うところを適宜修正し、別の一派として教団を立ち上げるのです。
現在、世の中には数多くの「既存宗教」が存在する。

しかし、既存宗教は、創設から時間がたつことにより組織化して硬直化し、教義の中にも時代に合わないところが出てくるようになる。
そこで、その既存宗教の信者が現在の教義を下敷きにして新たな宗教を立ち上げる。これが教祖として成功する道のりだという。
教祖はかならずしも論理的に整合性のある振る舞いをしなくてもよい。優秀な弟子をもてば、辻褄をあわせるのは弟子の仕事となる。
あなたがある程度教祖として大成した後は、ふらふらしたり、適当なことを言ったりするだけでも、それが教義となるので大丈夫でえす。あなたの行為に隠された深い真意は弟子たちが一生懸命考えてくれます。・・・あなたの言ってることが前後で少々食い違っていても気にしないで下さい。これも弟子たちが適当にアレンジして辻褄を合わせてくれます。
教祖として、どのような教義を設定すれば良いか?
「現在の社会の価値基準で幸せになれない人」を見出し、「新しい基準」を与えて「その人を幸せにする」という宗教を創立すればよい。

本書によると、宗教の本質は社会の既存の価値基準に反する新しい基準を与えることにある。
宗教の本質というのは、むしろ反社会性にこそあるのです。
現在では数億人という大勢の信者を持つキリスト教も、最初に現れたときは、罪人とされた人と交流するなど、当時の基準から見ると、とても反社会的であった。
布教の方法
布教をするにあたっては、現在大きな信者数を獲得した「キリスト教」「イスラム教」「浄土真宗」などからの成功例が解説されることが多い。
・親族、金持ち、弱者を勧誘しよう。
・コミュニティを作ろう。
・宗教建築をしよう。(「日常からの飛躍」を感じさせるような建築物を作ることが大切。)

感想
新しく宗教が作られる際には、その時代の問題を解決するために、一般に受け入れられている考え方に反することを主張することが多い。
そういう意味で、宗教は反社会的であるというのが本書で書かれている。
現在の伝統宗教であるキリスト教や仏教等も、成立当初は反社会性を持っていたという。
教祖として宗教を作る側の立場に立って、宗教の成り立ちと布教のプロセスがわかりやすく解説されている。
マニュアルと銘打って書かれているだけのことはあり、読みやすく、宗教を現在の形にしている事情を知りたい人にとっては良い読み物になると思う。
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