本書を読んだきっかけ。
最近、自分は、古くなった実家を相続したり、実家のリフォームなどをした。
そのときに、家などの不動産の仕組みを知るためにいろいろ本を読んでいくうちに本書に出会った。
現状、自分は不動産投資をやっているわけではない。

しかし本書は、投資をやっていない者が読んでも「住宅」で利益をあげる方法が 物語仕立てで書いてある。面白く、読みやすかった。
本書で扱う投資手法では、地方にある戸建て住宅を購入して、地元の人に入居してもらい、入居者からもらう家賃で利益をあげる。
著者のyoutubeチャンネル
著者は youtube もやっている。
不動産投資についての短い動画のほかに、人生論の動画も出していて面白い。
中でも、著者による高村光太郎の詩の朗読の回は心がこもっていてよかった。朗読から、言葉・詩の持つ力を感じた。
負動産とは?
住宅などの不動産を持っていると、固定資産税、都市計画税などの税金を毎年支払わないといけない。
こういった「懐からお金が出てゆくばかり」の不動産のことを、著者は「負動産」と呼んでいる。

負動産となってしまった住宅であっても、これを「リフォームして賃貸住宅として他の人に賃貸し」し、所有者に家賃という形の富をもたらす不動産にすることができる。これを「富動産」と著者は呼ぶ。
本書の特徴。
実家を離れ、都会で家族で暮らすサラリーマン男性。「秋山慎介」氏を中心に物語が進む。
「秋山」氏は、茨城土浦市にある実家を相続し、賃貸になっていく。
最初は次のように始まる。
誰も住まない家屋は、台風で瓦やスレートがズレ、雨漏りが生じてもそのまま放置されてしまいます。屋根を支える木材は黒カビの餌食となり、建物の劣化に歯止めはかかりません。
雑草で覆われた庭には空き缶や生ゴミが投げ込まれ、手入れの行き届いた往時の庭は見る影もなく、人々から目を背けられる対象となるのに、さほどの時間はかかりません。
このように、ほったらかしにしておけば傷んでいき、近所迷惑になってしまう実家。それを賃貸住宅に変えてゆく手法が叙述されている。

リフォームや、不動産を扱うときには仲介業者・リフォーム業者・解体業者など、数多くの専門業者の人たちと話をする必要がある。
大家として、業者・専門家のアドバイスを仰ぐ際の注意点についても解説がある。

けっきょく、依頼する業者の人々はすべてお金を稼ぐという目的のために仕事をしているわけなので、「ポジショントーク」をすることも多い。このことに注意して計画を進めていかなければいけない。
本文中には、「なるほどね。で、どうなの?」
という感じで、読者の心の声ともいうべき「合いの手」があり、テンポがよい対話ふうの本となっていて読みやすい。
講談・漫談を聞いているような気にもなる。
本書全体を通して、一戸建ての不動産を愛する著者の気持ちが伝わってきた。不動産の心の声が聞こえてくるような本だった。
印象に残った部分。
庭について。池や樹木については、
賃貸をする場合と転売をする場合では借り主(買い主)の考え方が違ってくる。
と指摘されており、意外と思った。

おすすめの読者
本書は、地方にある実家を親などから相続で取得したが、自身は都会に住んでいるため実家の使いみちがなくて放置したままにしようとしている人が読むとためになると思う。
感想
実家を単に放置しておくとデメリットが多い(実家が「負動産」になってしまう)のに対して、手間をかけて財産として仕立て直すことにより富を生みだす「富動産」となってくれる。
そのための具体的な手順を、ストーリー仕立てで読みやすく記述してくれる。
全体として、地方の戸建て住宅という不動産に対する、著者の「愛」を感じる本であった。
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