実家の法事(臨済宗)に出席して、宗教について学んでみたくなったので本書を購入した。
著者がこの本を書いた理由
著者は仏教だけではなくいろいろな宗教を研究している。
現代では、日本人が仏教の宗派に触れるのは自分の家の葬式のときぐらいしかない。

いっぽうで、パワースポットのブームなどで寺院など仏教関係の施設を訪れる人々が増えている。
寺院を訪れるときには、仏教の「宗派」について知っておいたほうが良いことがあるので、本書が生まれた。
日本の仏教は、さまざまな宗派に分かれており、宗派によって教えや考え方、実践の方法が違う。同じ仏教の宗派だからと言って、十把一からげにはできないのだ。
浄土真宗が多い理由
浄土真宗は北陸や広島周辺を中心に信者が多い。日本の十分の一ぐらいは浄土真宗だとされる。

また、浄土真宗とならび日蓮宗も信仰者が多い。
この理由はなぜか。著者によると、それは
浄土真宗と日蓮宗に共通する点「具体的な救済の手段がある」があるからだという。
たとえば、浄土真宗では南無阿弥陀仏ととなえる。また、日蓮宗では南妙法蓮華経ととなえると、信者が救済される。
このように分かりやすい救いの手段が用意されていることで、江戸時代には、江戸・京都の町人に日蓮宗が広まり、地方の農民や漁民に浄土真宗が広まった。

親鸞の宗祖としてのカリスマ性は際立っている。
浄土真宗を開いた親鸞は、宗祖のなかでもその存在感が際立っている。以前は、出版社が経営難に陥ったときには、「親鸞もの」を出せばなんとかなるとさえ言われていた。
本書では、浄土真宗以外の有力な宗派もとりあげられる。
たとえば曹洞宗も、寺院の数という点でとても有力な宗派だといえる。
本書の中で、曹洞宗が広がっていく過程を描いた部分も力を入れて書かれている。
宗祖のカリスマ性の違い
宗派を開いた僧侶(宗祖)の「カリスマ性」には宗派によってかなり違いがある。
カリスマ性がある宗祖
空海(真言宗) 親鸞(浄土真宗) 日蓮(日蓮宗)
これらの僧は、伝記が映画化されたり、伝説化・神格化されたりしている。

いっぽうで、
最澄(天台宗) 法然(浄土宗)
は、映画化されることもあまりなく、カリスマ性が少ないと言えるという。
本書の内容
タイトルからすると浄土真宗の話を中心に書いてあるように思えるかもしれないが、本書は日本の仏教について広く扱っている。
浄土真宗のほかに、日蓮宗・曹洞宗は日本で有力な宗派であり、詳しく解説されている。
まとめ
日本の仏教宗派の分類と特徴、それぞれの宗派の歴史や特徴を解説した本。
浄土真宗や日蓮宗の信徒が多いのは、これらの教えが庶民のための信仰である面があるからである。
感想
仏教は、釈迦の現世拒否の姿勢から生まれた。
それが日本に伝わり、草木信仰のような考え方と合わさっていった。

その結果、釈迦の仏教と日本の仏教は、同じ仏教だが教義はかなり異なるものとなった。
これは興味深い現象だと思った。
今後も、仏教という名でくくられたさまざまな思想について思いを深めてゆきたい。
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